士業のバトン「川口 達也氏(会計士)」

士業のバトン「川口 達也氏(会計士)」
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  • 作成日:2018年11月26日
  • 更新日:2018年11月26日

士業のバトン第5弾は、会計士の川口 達也氏をご紹介します!

川口氏は、ベンチャーの経営管理からNPOの監事、小売酒屋の再建まで携わっている若手会計士です。
DeNAから昨年転職し、3つのパラレルワークをしています。
では、川口氏のバックグラウンドやベンチャーをはじめ、士業の独立や士業連携についてご紹介してまいります!


今、何の仕事をしているか教えてください。

現在、3つの組織に属してパラレルワークをしています!
具体的には、
1、株式会社Loco Partners(以下、Loco Partners)の経営管理部のマネージャー
2017年に株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)からLoco Partnersに転職し、経理・総務・法務・労務などバックオフィスを全て管掌しています。
当社は、厳選された一流ホテルや旅館をご提案する宿泊予約サービス「Relux」を運営しているベンチャー企業です。去年からKDDIの子会社になっています。

2、認定NPO法人3keys(以下、3keys)の監事
2か月に1回程度、3keysに監事(会社でいうと監査役に相当する役職)として関与しています。3keysは、虐待や貧困などで、頼る大人が周りにいない子どもたちに、学習支援や相談窓口の設置、適切な支援機関への橋渡しをするNPO法人です。
今では、ボランティア入れて50人くらいのソーシャルベンチャーのような組織です。
3keysに携わるようになったのは、認定NPOを取るためにプロボノ(専門知識を活かしたボランティア)として内部管理体制を整えるお手伝いをしたことがきっかけで、その際に自分のDeNA時代に培ったスキルは意外と他の組織でも使えると感じましたね。

3、実家の小売酒屋の再建
実は私の実家は小売酒屋を営んでいて、その再建をLoco Partnersへの入社をきっかけに複業ができるようになったので取り組んでいます。直近では、日本酒メディア「SAKETIMES」を運営する株式会社Clearに実家の株式を旧酒販免許と共に売却をしました。ちなみに、実家の商売を続ける前提でのスキームを組んでM&Aをしたので、今でも実家は商売を続けています。
このディールは、端的に言うと、ジャンル的には中小企業の事業承継の部類に入るので、会計以外にも、相続税・法人税・酒税・会社法・許認可など様々な論点があり結構大変でしたが、今まで培った士業での人脈を活かして、日本酒好きの会計士・弁護士・税理士・行政書士の方の力を借りながらも、当事者としてM&Aを初めて経験することができたので大変勉強になりました。


なぜ、会計士を目指したのか教えてください。

高校時代の進路相談の際に実家を継ぐという選択肢が頭をよぎった際に、父に相談をしたところ、「小売に未来はないから資格を取れ」と言われ、確かに私の目から見ても、酒類の販売が規制緩和されて、どこでも買える時代になっており、周りの小売酒屋も、コンビニや量販店にシェアをとられ、廃業しているような状況だったので、素直に小売の未来は厳しいなと思ったので何かしら資格を取ろうと思いました。
資格については国家三大資格の医者・弁護士・会計士しか、当時は思い浮かばなかったので、その3つの中から、実家が商売をやっていたこともあり、一番自分の人生に関連しそうな会計士を選択しました。


なぜ、一番はじめのキャリアとして、監査法人ではなく、事業会社(DeNA)を選択したのか教えてください。

大学3年の秋に合同説明会で、たまたま企業ブースに足を運びエントリーをしたのがDeNA で、その年の12月の短答式試験を受け合格したので、そこから本腰を入れて、事業会社への一般就活をした際に、ご縁があり2011年2月末にビジネス職の新卒枠で内定を頂き、2012年4月にDeNAに入社しました。
その後、大学4年次は惜しくも不合格だった論文式試験の勉強を働きながら行い、新卒1年目の時に論文式試験に合格しました。
そのため、会計士試験合格後に就職活動をしたわけではありません。
実家が商売をしていたこともあり、ビジネスの実務で会計の専門知識を活かしたかったので、会計士試験合格後も監査法人への転職は考えませんでした。
その当時、DeNAはベイスターズを買収して知名度が急激に上がり、ソーシャルゲーム全盛期で優秀な方がどんどん入社してきましたが、事業領域を急拡大していた時期だったので、新卒でDeNAの経理部に配属されると、明らかに人の数よりも仕事の数が多い環境下で様々な経験を積ませて頂きました。
入社したタイミングはちょうど横浜ベイスターズの買収直後でPMIをしている最中でしたし、1年目は会計システム刷新プロジェクトのメンバーとしてアサインされ財務会計、管理会計、原価計算などの会社の基幹システムを要件定義に従事しました。大学時代に座学の勉強しかやってこなかった私が、いきなり要件定義・RFP・ユーザーテストなどITコンサルティングを担当したわけです。
ただ、思い返すとこの時の経験は、今のキャリアを歩んでいく上の土台になっていると思います。いやー、でも当時は大変でした!笑
2年目以降は、IFRSでの連結決算や開示資料の作成、監査対応も担当していました。
現職では、中途採用の方の書類選考や採用面接もしているのですが、自分と同世代で同じくらいの経験を積んだ人はほぼいらっしゃらないので、稀有な経験を積ませていただいたなと感じていますね。
あと、DeNAはキャッチーな会社だったので、例えば、会計士対象のイベントに参加すると、周りが四大監査法人の中で、唯一プロ野球球団を持つ企業であるというケースがほとんどだったため、会社の看板のおかげで、数多の会計士の中に埋もれずに済みましたね。


Loco Partnersに転職した理由を教えてください。

色々理由はありますが、1番の理由はもともと「Relux」が好きだったことです。
今、「Relux」のユーザーは、約170万人程度いらっしゃるのですが、私は2005番目に会員登録したユーザーでした。
転職活動の際に、エージェントから候補の会社を複数紹介されたのですが、やはりサービスが好きだったこともあり、この会社とサービスを伸ばしながら、自分も成長したいと思ったので、Loco Partnersに入社することに決めました。
ちなみに、元々親子三代ベイスターズファンだったので、グループ内の人事異動という形で球団経営に携わるキャリアもあるのではないかと考えましたが、色々と悩んだ結果、ファンという立場で関わり続けることにしようと決めました。

また、実家は食料品や飲料を販売する小売酒屋で、Loco Partnersは日本のホテルや旅館などの宿泊施設を厳選して紹介する旅行代理店です。
一見、全く関係ないように思いますが、目指しているところが同じだということに転職活動を通じて気づきました。
日本のお酒といえば「日本酒」ですし、日本酒には地域性があり、各地で「地酒」があります。
一方で、「Loco Partners」という社名には、「Local CommunityのPartnerでありたい」という思いが込められています。
実家の小売酒屋もLocal Communityの中で商売を通じて交流をしていますし、今後、実家を立て直すとしたら、日本酒に絞ってもよいと思っていた矢先に、Loco Partnersと出会い、日本酒と日本各地の宿泊施設はどこかで繋がっているだろうと思ったことと、アプローチは違えども目指す方向性は一緒なので、何かしら相乗効果はあるだろうと思ったことも、Loco Partnersに入社することに決めた1つの要因です。


事業会社での今までの面白&大変だったエピソードを教えてください。

Loco Partnersに入社して、1週間も経たないうちにKDDI傘下に入って、いきなりPMIが始まりました。
入社当初は2年程かけてIPO準備でもやるのかと思っていたのですが、人生ってわからないものですね。笑
PMIに組み込まれながらも、月次決算・年次決算を締めて、そのまま課題解決をしていく怒涛の日々を突き進んでいきました。
ただ、振り返ると、「Relux」というサービスをより一層伸ばすためには、あの時点でKDDI傘下に入るということは最適なタイミングでの意思決定だったと思います。


会社&個人として、5年後、10年後に目指されているところを教えてください。

将来的には、「飲める会計士事務所を作りたい」と思っています。笑
当初は、実家が持っている旧酒販免許があらゆる酒類を通信販売できるという、平成以後に取得された新酒販免許にはない効力を持っていることを知っていたので、将来的には旧酒販免許を使いつつ、DeNAにいたことでITの世界にも多少は造詣があるので、それを活かして事業でもと思っていました。
ですが、株式会社Clearの社長の生駒さんの熱意とその熱意が注入されたプロダクトたる「日本酒」の美味しさ、そして、「日本酒で世界を獲る!」という気概に魅了されて、実家の旧酒販免許を彼に託すことにしました。その甲斐もあり、2018年7月に高付加価値の日本酒を販売する「SAKE100」がリリースされたので、日本酒の未来を切り拓く一助になれたかなと思います。
今後については、本業をやりつつも、生駒さんとの関わりや酒造見学等を通じて、日本酒のポテンシャルを感じつつも、まだそれを発揮しきれていないと感じているので、「飲める会計士事務所」として、経営者たる蔵元の方の支援をしたいと思いつつも、日本酒は飲んでナンボのものだと思うので、実家の店舗を使ってイベントをしつつも、日本酒を販売したりすることも面白そうだなと色々と妄想をしています。


士業の方へ


テクノロジーが士業の業務に与える影響をどう見ていますか?

テクノロジーへの対応は、不可避だと思いますね。
Loco Partnersでも、職業的判断が求められるところは士業に依頼するようにしていますが、基本的には財務会計・勤怠管理・給与計算などのシステムはクラウドにしています。
今後、士業の業務においては、システムで単純な入出力作業はそれで代替されることを前提になると思いますので、セカンドオピニオンや経営相談といった意思決定をサポートする部分に重きが置かれていくと思います。


起業、就職、転職、独立のタイミング、分野など何かアドバイスがあれば教えてください。

私みたいに、最初から監査法人に就職せずに、事業会社に就職するという選択肢を取る方がもっと増えても良いと思います。
会計士試験の勉強は、財務会計・管理会計・監査論・租税法・会社法・経営学・統計学など、ビジネスの基礎を満遍なく学ぶことができているので、その基礎を用いれば、監査に限らず、経理・財務・経営企画・法務・労務・総務など、企業内の様々な業務に活かすことができます。例えば、法務や内部監査などであっても、会社法や監査論を学んでいるので、他部署との共通言語のベースがあるので、それを活かして、インターネットや書物で調べれば社内の様々な業務に対応できるものです。
ですので、最近増え始めてはいますが、事業会社への就職も候補に是非入れてみてください!


監査法人からベンチャー企業への転職は?

月並みの解答ですが、人によって合う、合わないはあると思います。
監査法人では、クライアントは上場企業レベルがほとんどである以上、ある程度成熟した組織であり、基本的には批判的機能、つまり出来上がっているものの中から課題や問題点を見つけ出すことが仕事です。
一方、ベンチャー企業にとって必要な視点は、批判的機能ではなく、むしろ指導的機能の方だと思いますすし、指導することも当然ですが自分で手を動かして背中を見せて、走りながら考えて突き進んでいくことが求められます。
なので、このようなマインドの違いがあることを理解して、そこにとりあえず飛び込んでみて荒波にもまれながらも進んでみようという気概があるのなら、ほぼ0から仕組みを作りあげるチャレンジができるベンチャー企業への転職は面白いと思いますよ!


士業連携(紹介、外注、連携等)について


何士の方と何の案件について連携しましたか?

Loco Partnersでは、もちろん様々な士業と連携していますし、特に、実家のM&Aの時には、多くの士業の方と連携しました。
酒販免許の取得と移転ではアクセス行政書士事務所の大浦先生、法人税や相続税などの税務面では私に「士業のバトン」を渡していただいたビジネス・ブレイン税理士事務所の畑中先生、EMZ総合会計事務所の佐久間先生、そして、ディール当初から私と二人三脚で酒税と事業承継と税務を紐解いていただいた弁護士法人ほくと総合法律事務所の千葉先生など、たくさんの方に助けて頂きましたね。


士業のバトン


士業の方をご紹介ください!

では、元阪神タイガースの公認会計士 奥村武博様をご紹介させていただきます。
奥村様は1997年ドラフト6位で阪神タイガースに入団されたものの、度重なる怪我で2001年に戦力外通告を受け現役引退。その後、打撃投手や飲食業を経て公認会計士を目指すことを決意し、働きながら2013年に会計士試験に合格し、日本で初めて元プロ野球選手から公認会計士となり、現在は講演やセミナーを通じたデュアルキャリアの啓蒙や、会計・税務の専門知識を活かしてファイナンス面からのサポートなど、アスリートのキャリア形成支援活動を行っている方です。

奥村様とは5年程前に会計士受験生向けの就活セミナーでパネリストをしたのをきっかけに交遊を深めるようになり、前職のDeNAも球団を持っていたこともあり野球を接点に親しくなりました。現在、奥村様は史上初めてのプロ野球選手会計士として誰も解いていない課題に立ち向かう姿が素敵で全力で私も応援している方です!

川口 達也

川口 達也

もっと心地よい旅を。 Reluxをご覧いただき、誠にありがとうございます。 Reluxは一流ホテル・旅館のみを厳選した、宿泊予約サービスです。全国各地の一流ホテル・旅館を泊まりあるいてきたReluxの審査委員による厳しい審査を通して、心からおすすめできる宿泊施設だけを厳選してご紹介...
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