士業のバトン「奥村 武博氏(会計士)」

士業のバトン「奥村 武博氏(会計士)」
  • 公認会計士
  • 士業のバトン
  • 作成日:2019年02月09日
  • 更新日:2019年02月09日

士業のバトン第6弾は、元プロ野球選手で公認会計士の奥村武博氏をご紹介します!

奥村氏は、プロ野球選手として阪神タイガースで4年間プレーしていた公認会計士の方です。
現在は、一般社団法人アスリートデュアルキャリア推進機構の代表理事として、スポーツの発展に貢献するために様々な活動をされています。
では、奥村氏のバックグラウンドや起業をはじめ、若手士業へのメッセージまでご紹介してまいります!


今、何のお仕事をしているか教えてください。

一般社団法人アスリートデュアルキャリア推進機構(以下、デュアルキャリア)の代表理事と税理士法人オフィス921(以下、オフィス921)で税務業務やスポーツビジネスコンサルティングをしています。
デュアルキャリアは、アスリートが生涯輝き続け、人生を豊かに過ごせる社会を実現するというビジョンを掲げ2017年10月に設立した一般社団法人です。
「デュアルキャリア」には2つの意味があります。
1つはスポーツ以外のことに同時に取り組み両立すること。昔から言われている文武両道という側面。
もう1つは、スポーツに真摯に取り組む過程で同時にスポーツ以外の分野でも活用できる様々な能力を身に着けることが可能だという考え方です。
私自身、スポーツ選手のキャリア形成支援を通じて、スポーツ業界のさらなる発展に貢献していきたいと考えています。
オフィス921ではアスリートの顧問業務を中心に税務サービスや起業支援、スポーツビジネスコンサルティングを提供しています。


なぜ、デュアルキャリアを設立されたのか教えてください。

スポーツ選手が当たり前に、キャリアを両立する考えを持つ社会にしたいとの想いからです。
例えばプロ野球選手の場合、戦力外通告を受けてからセカンドキャリアを考えるのではなく、選手時代に引退後の将来準備も行う。つまり、アスリートとしてのキャリア形成と、人としてのキャリア形成の両方に同時に取り組むべきだと思うんです。
スポーツ選手は、日々のトレーニングや試合を通じて、スポーツ以外のビジネスシーンでも役に立つ能力が育っているはずです。せっかく長年打ち込んだ競技生活で、ものすごい能力を身につけたのに、活かさないのは勿体無いですよね。自分自身が可能性を閉ざさなければ道は必ず開けると信じています。
こうしたデュアルキャリアの考え方を伝えていきたいと思っています!


デュアルキャリアでの活動を教えてください。

スポーツ選手の資産形成のサポート、さらに自分の経験を活かして、デュアルキャリアの必要性を伝えることを目的とした講演活動等を行っています。
そして、昨年からキャリア支援活動を始めました。
啓蒙活動では、根本的なスポーツ選手のマインドチェンジ、つまりスポーツの経験はビジネスの世界でも活かせる!ということを伝えるために講演、個別相談などを行なっています。
キャリア支援活動は引退したスポーツ選手と企業をつなぐ人材紹介ではなく、受入先のコミュニティネットワークを構築し、我々がハブとなってスポーツ選手の可能性を広げていこうと考えています。例えば、学びたいのであれば大学、資格の学校を紹介する、働きたいのであれば受入企業を紹介するなど、スポーツ選手のキャリア創造コミュニティを構築することを目指しています。
ちなみに「アスリート」は広い概念ですが、スポーツ選手全般をイメージしています。プロアマ、年齢は関係なく、スポーツをやっている人が対象です。


今までの失敗エピソードを教えてください。

いっぱいあるんですよね。笑 何を話しましょうかね。笑
でも、やはり1番は、子供の時から夢見ていた、プロ野球の世界に入ることができましたが、プロ野球選手になれたことがゴールになってしまったことですね。
阪神タイガースに入団後、本当はそこから競争が始まるのですが、マインド、練習量、体のケアを含め、プロとしても意識が行き届いていなかったと思います。
また、現役時代の監督は野村克也さんでしたが、最近、野村監督の本を読み直して、野村さんのMTGを自分のものにできなかったことがとてももったいなかったとより強く思っています。
何れにしても怪我はしていたかもしれませんが、完全燃焼できなかったことは消化不良で残っていますね。
ただ、この失敗を経験できたからこそ、公認会計士の試験に合格したところで満足せずに、新たなステップと捉えられるようになりました!


なぜ監査法人に就職したのか教えてください。

もともとスポーツ界に関わりたいという想いがあったので、初めはコンサルティング会社を考えていました。
ただ、私自身、合格した時は34歳、かつ今までビジネス経験を多く積んできたわけではなかったので、まずは監査法人で色々な企業に関与して、知見や経験を得たいと思ったからです。
ある意味遠回りかもしれませんが、結果的に将来やりたいことへの近道になるんじゃないかと思いました。
監査では、色々な業種、規模の企業に関与し、社内の深いところまで見ることができます。
一般企業では深いところに行くまで時間がかかりますし、色々な知見を効率的に深めることができるのは、監査の特権だと思います。
後は、そこから自分で何を吸収し、将来にどう活かすかという意識が大事ですよね。


タイガーズ出身のアドバンテージを活かして関西ではなく、東京での就職を選んだのですか?

はい、初めは大阪でしか就職活動をしていませんでした。
ただ、優成監査法人の代表の方に、「是非東京でやらないか」とお声がけ頂いたので、これもご縁だと思い、東京事務所での就職を決めました。
もちろん東京はクライアント数が多く、今までにない出会いもあるのではないかなどもありますね。
東京にも熱烈な阪神ファンの方が多く、球団に関わらず、経営層に野球好きな方が多いので、今ではそこから色々なご縁が広がっています。
結果的に東京で良かったと思っています。


スポーツ選手に対する税務サービスの市場はどうなのでしょうか。

普通の顧問先と大きく変わらないと思います。
ただし、スポーツの種目にもよりますが、スポーツ選手は有期限、かつ年俸制で報酬のボラティリティが高いので、報酬が安定していません。
そのため、新規顧客の開拓をしていかないといけない市場だと思います。
オフィス921は、もともとスポーツ選手向けの税務サービスは力を入れており、海外進出するスポーツ選手に対する税務も強いので幅広く対応できることが強みです。
やはり顧客獲得はご紹介が多いです。私自身が選手だったこともあり、最近はそのつながりでご依頼やご紹介をいただくことも増えてきました。


会社&個人として、5年後、10年後に目指されているところを教えてください。

デュアルキャリアについては、スポーツ界でデュアルキャリアの考え方が当たり前の世の中になるような貢献をしていたいと思います。当たり前になれば、今、問題となっているようなスポーツ選手のセカンドキャリア問題は起きないと思うからです。
そのために、現役引退を問わずスポーツ選手の可能性を拡げるハブ的存在になれるよう、多くのスポーツ選手をサポートするとともに、講演やセミナー等を通じたスポーツ業界全体への情報発信を継続していきたいと思います。
個人としては、現状に満足せず、チャレンジし続けていたいと思っています。
まず自分がチャレンジしていないと説得力に乏しく、デュアルキャリアを推進できないと思うので!
人間は、自分の知っている範囲内でしか物事を考えられないので、知っている範囲を広げることが自分の可能性を広げることに繋がると思うんです。
日々アンテナを張って過ごし、色々な分野に興味を持って、色々なチャレンジをしていきたいですね。


採用について教えてください。

デュアルキャリアについては、スポーツ選手だけでなく指導者や保護者、企業など、デュアルキャリアの理念・活動に共感し支援してくださる賛助会員を募集しています。
是非、こちらで入会をお願い致します!!


士業の方へ


士業の未来、特にテクノロジーの影響をどのように見ていますか?

士業の業務は徐々に置き換わっていくことは間違いないと思いますし、それを変えることはできないと思っています。
むしろテクノロジーを活かして、より付加価値の高いサービスをクライアントに提供していきたいと思っています。
僕自身もそうですが、AIはまだまだ未知の領域という感覚の方が多いと思うのですが、相手が何者なのかがわかれば、どう共存していくべきかみえてくると思っています。
例えば、野球でも初めて対戦するバッターは打ち取りにくい。何度か対戦し相手の特性がわかれば、具体的な対策が見え、打ち取れるようになる。
つまり、テクノロジーをキャッチアップして、どう共存していくかを考えていくことが大事ですよね。


独立のタイミング、場所、専門分野、営業方法、その他気をつけるべきことなど教えてください。

まず、士業の枠に捉われなくて良いと思います!
具体的に独立を考えている方は、失敗を恐れずにチャレンジすることだと思いますね。
士業はとても強力な保険を持っていると思うんです。失敗したら戻れる場所があるので。
プロ野球選手の戦力外通告とは違い、仮に事業に失敗したとしても資格自体を取り上げられるわけではないですよね。
士業は保険を持ちながら、やりたいことにチャレンジできることは本当に強みだと思います。
漠然と独立を考えている方は、先ほども申しましたが、まずは色々なことにアンテナを張り、興味を持つことが大事だと思います。
また、目の前の仕事に対して、目的意識を持って考えながら取り組むことも重要ですね。意識の持ちようだけで、学べる量は変わってきますし、日々の取り組みを変えることが、独立への最短距離に繋がると思います。


士業連携(紹介、外注、連携等)について

スポーツ通じて、様々な士業の方と繋がることができています。
具体的な士業連携としては、社労士、弁護士の方が一番多いです。


士業のバトン


士業の方をご紹介ください!

では、弁護士の松本泰介様をご紹介させていただきます。
松本様は、スポーツ法務の第一人者として、日本スポーツ仲裁機構や日本スポーツ法学会など多数のスポーツ関連団体の役員等を歴任され、さらには早稲田大学スポーツ科学学術院の准教授として後進育成にも携わるなど、多方面でご活躍されていらっしゃいます。
松本様が講師を務める早稲田大学スポーツMBA Essenceを私が1期生として受講したことでご縁を頂きました。まだ知り合って日は浅いですが、日本プロ野球選手会の監事も務めておられプロ野球選手のセカンドキャリア問題にも強い関心をお持ちだったことから意気投合し、MBA修了後も継続的に情報交換等をさせていただいております。
今後もお力をお借りしプロ野球選手のキャリア問題の改善などプロ野球界のさらなる発展のために一緒に取り組んで行きたいと思っている方です!

写真:『月刊タイガース』

奥村 武博

奥村 武博

スポーツ選手のデュアルキャリア形成支援を通じて、スポーツ振興やスポーツビジネスのさらなる発展に貢献するために活動しています。
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